【書籍】坂口恭平著 『現実脱出論』

2014年10月06日
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『現実脱出論』

僕は現実に不満を持っているわけでも、逃げ出したいと思っているわけでも無いのですが、著者の坂口恭平氏に興味を持っているので、この本を手に取りました。

坂口恭平
1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年に日本の路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』をリトルモアより刊行。2006年カナダ、バンクーバー美術館にて初の個展、2007年にはケニアのナイロビで世界会議フォーラムに参加。2010年、都市で創造的に生きるための方法論として『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)。2011年、隅田川の鈴木さんのソーラーハウスでの生活を記録した書籍『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(大和書房刊)。2012年には『独立国家のつくりかた』を講談社から出版。その後の同年8月刊行予定の『モバイルハウスのつくりかた』が映画化。*1東日本大震災後に新政府を設立し、初代内閣総理大臣に自ら就任した。

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坂口氏はこの新書にどんなことを書いているのか。それが知りたかったのです。

著者は「現実」を
・複数存在する空間の1つに過ぎない。
・他者と意思疎通をするための舞台なので集団における空間である。
・人間という集団が作り出した人間が生きることができる唯一の場所。

などと説明しています。

また、「現実」と対置する空間を「思考」と呼んでいます。「思考」は個人の空間です。そして、「現実」と「思考」という2つの空間が扉を介して混ざった状態を本来の日常と定義しています。

ところが、「現実」は集団における空間であるため、そこでは個人の「思考」はすぐに窒息して息絶えてしまいます。規律、常識、法律などの集団を管理するための装置によってすぐに壊されてしまうのです。つまり、個人の「思考」を丸裸で「現実」に持ち込んでも、奇異の目で見られて勝ち目は無いと。

そこで人間は「思考」を「創造」へと変化させてきました。著者は「創造」を「思考をなるだけ正確に投影するための装置のような言語」と言っています。それは言葉だけではなく、文章だったり、絵や音楽であったりするわけです。「現実」は集団における空間なので、そこでは人間は互いの創造物の交換を円滑に行うことができます。

しかし、「現実」は次第に肥大化します。他の空間を押さえつけ、まるで現実しかないように振る舞い続けるわけです。

しかも、個々人までもが集団の物の考え方や捉え方を模倣するので、今では個人の「思考」が「創造」として芽吹ける隙間を見つけるのが困難になっています。

このことで苦悩する個人が増えています。年間3万人近い自殺者が出ている現状には、「人間的現実」の世界だけが唯一の自分たちの住処であると考えていることの限界があらわれているように思うと言っています。

そこで、「現実」から脱出するのです。

現実脱出とは現実逃避とは違います。逃げる行為は現実の存在感を逆により強めてしまいます。だから、現実を他者と捉え、切り離します。著者は「これまで蓋をしたり、存在を体感しているのに現実的ではないと切り捨ててきたことを直視してみる」という意味を込めています。

本の中では現実的ではないと切り捨ててきたことの例がいくつか上げられています。

1つ紹介すると、開店間もない居酒屋に友人と入り、自分たち以外客がいない店内は広く感じるはずなのに、いつも狭く感じてしまう。ところが、酒が進み、店員の声が大きくなり店内がぎっしり客で溢れかえってくると店内が広く感じられる。著者は固定された空間の広さに違いを感じています。そして、膨張いていると感じた瞬間の方が正確に測った体積よりも真実味を感じているのです。

著者の坂口氏は躁鬱病です。鬱状態に陥ると死にたい衝動に駆られるそうです。そのことに対して感情的に対応しても無駄なので、それは「脳の誤作動のせいである」という家訓を作っています。著者はこの躁鬱病のおかげで、「現実にどっぷり浸かっていたら何の疑問も抱かずに通り過ぎていくはずのことに立ち止まり、つい考え込んでしまえるのだ」と言っています。

通常、人間は個人の「思考」も「現実」によって補正されます。だから僕も著者が言いたいことは自分なりに理解ができても、重要なキーワードである「現実」や「思考」、「創造」などの認識が著者と近いのかいう点には自信が持てません。思考は簡単に現実に補正されるので、このようなことについて深く考えたことが無いからです。

著者は言います。

現実に単純化される前に、現実から脱出し、巣篭もりをして、独自の空間を創造という他者に知覚できる衣にして、羽織りながらぎこちなく踊る。爆発する個人的な知覚を衣も懐に隠し持ちつつ、剽軽な顔で貧乏揺すりをしながら笑う。手を刃のように伸ばして、大気を切り、足を独楽のように回転して、滑り転げながら、地面を擦る。

退屈な時と楽しい時では時間の経過スピードが違うと体感しませんか? もしかするとその感覚の方が現実によって補正された思考よりも正しいのかもしれません。

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