[書籍] 知られざる皇室外交 (角川新書) 西川 恵 (著)

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今年8月にビデオメッセージとして放送された、「象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉」の中で生前退位のご意向を示されたことから、政府はどう対応していくべきなのか議論が行われています。

現在の皇室制度では生前退位の規定がないため皇室典範を改正すべきとか、今回は特別立法でとか、そもそも譲位の必要はなく、摂政を置けばいいといった意見まで見られます。

そもそも今上天皇はなぜ生前退位の意向を示されたのか?

それを少しでも知るために、西川 恵氏が書いた『知られざる皇室外交』を読んでみました。

知られざる皇室外交

内容
1953年、19歳の明仁皇太子は大戦の遺恨が残る欧州を訪れた。それから続く各国王室との交流、市民や在外日本人との対話、戦没者の慰霊…。両陛下の振る舞いやおことばから根底にある思いにせまり、皇室外交が果たしてきた役割を明らかにする。

今上天皇が皇太子時代から行ってきた国際親善という名の皇室外交がエピソードを交えて豊富に書かれています。感動を覚えるエピソードも多く読みやすいです。

日本の皇室は政治的存在ではないので、この「皇室外交」という言葉を宮内庁は認めないようですが、現実には日本の首相が何度訪問しても成し得ない和解や有効関係の強化を両陛下が訪問することで可能にした例は少なくないようで、宮内庁が認めずとも、相手国にとっては紛れもなく外交です。

今上天皇は、この「皇室外交」を並々ならない思いで行ってきたことが分かります。それは、昭和天皇の名前で始められた戦争の責任の重荷を生まれながらに背負う立場ゆえかもしれません。

戦後、対日感情が依然として厳しかった国々を昭和天皇の名代として何度も訪問し、戦争によってこじれた関係を生涯かけて立て直そうと献身してこられました。

その時に、「昭和天皇の名代としての皇太子は元首ではないので、元首としてもてなすことはできない」と相手国から難色を示されることがあったそうです。

また、自らも「天皇の名代ということは、相手国にそれに準ずる接遇を求めることになり、相手国に礼を欠くように思われ、心の重いことでした」と語ったことがあるそうです。

そういった状況下で、国際親善の成果を挙げなければならなかったことの難しさを思い出し、天皇は摂政を置くことには否定的なのかなと感じます。

生前退位について慎重に検討すべきという意見は、日本の皇室が世界でも稀な長い一貫した系統を保持しているからだと思います。

結論を出すまでにあらゆる可能性を考慮しなければならないということも理解できます。

ただ、現在の皇室外交は両陛下が(皇太子、美智子妃のときから昭和天皇の名代として引き受けてきた外国訪問も含めて)確立してきたのは間違いないですし、その人柄を含めた振る舞いには感銘を受ける外国人も多いわけで、今最も重視すべきは今上天皇のお言葉だけではないのかと思います。

生前退位については、両陛下よりも正しい判断ができる人がいるとは思えません。

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