【書籍】「PK」 伊坂幸太郎著

Sponsored Link

超能力

「PK」 伊坂幸太郎著

内容紹介
彼は信じている。時を超えて、勇気は伝染する、と――人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。

私は本を初めに手に取るとページ数を確認する癖がありまして、必然的にあとがきが書かれた辺りをペラペラめくります。

その時、あとがきにある東日本大震災の文字が目に入ってしまいました。

伊坂幸太郎といえば仙台市です。作中にも仙台は度々描かれ、伊坂ファンで仙台在住であることを知らない方はそういないと思います。

その伊坂氏が東日本大震災当時のことを語っているわけですから、つい読んでしまったわけです。

伊坂氏はあとがきにこう書いています。

ここに収録されている、「PK」と「超人」は、2010年の春に書きはじめ、夏の終わりに完成し、校正作業まで終えていました。諸事情によりすぐに雑誌掲載されず、結局、掲載が決まったのが翌年、2011年の2月頃、その直後に東日本大震災が置きました。なぜ、このような時系列を説明するのかといえば、雑誌掲載時に読者の方から、「震災が起きた中、作品を完成させたのは立派だ」と褒められたことがあり、非常に申し訳ない思いに駆られたからです。~省略~ こういった説明は小説の中身とは無関係ですし、発表した作品に誤解が付き纏うのは避けられないと分かっているのですが、事実は一応、伝えておこうと思った次第です。「密使」は大森望さんの編んでいるSFアンソロジー「NOVA」に載せてもらうために書いたものです。こちらも原稿自体は、2011年の2月には完成していたものです。

至って普通のことが書かれていますが、読了後にこのあとがきを読むと不思議な印象を持ちます。

というのは、この本はあとがきにあるように書かれた順番と同じく、「PK」「超人」「密使」の順で中編3作品がまとめられています。

しかし、最後の「密使」まで読んで、この本の隠されたトリック(ネタバレするので内容は書きませんが)に気づくと、この3作品は単行本化を見据えて書かれたと分かります。しかもおそらく「密使」が先に書かれたと。

そして、普通ならここからあとがきを目にするわけです。もうお分かりですね。そこには「PK」「超人」が先に書かれ、しかも「密使」は別の雑誌に掲載された話だと書かれているわけです。

過去、雑誌に掲載した読み切り3作品に少し手を加え単行本にまとめたら、中編3作品全体で長編作品のように楽しめる形になったのは偶然ですよと言ってるかのようです。

これは伊坂幸太郎らしい演出であり、絶対偶然ということはあり得ませんが、読者を楽しませるために、あとがきにまで策を講じるとは流石としか言いようがありません。

本作でも伊坂ワールド全開でした。

関連記事

福岡のウェブデザイン事務所「ハブワークス」

HP作成・リニューアルは福岡のハブワークスまでお気軽にお問い合わせください。ウェブサイト公開後の修正・更新もお任せください。フリーランスだからできるリーズナブルな料金設定でサービスをご提供いたします。