進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義
内容
この宇宙になぜ生命が生まれたのか。この謎のカギを握るのが「進化」という考え方だ。しかし「進化」ほど一般に誤解されていることがらもない…世界でも随一の啓蒙家であるドーキンスがイギリスのティーンズを対象に行なった名講義のほまれ高いクリスマス・レクチャーを、ベストセラー『知の逆転』で科学と一般読者の距離を一気に縮めてみせたサイエンスライターが世界にさきがけて編集・翻訳し書籍化する、知の最重要なアイデアへのガイダンス。
第1章 宇宙で目を覚ます
第1章では、現世紀に自分が生きている確立がどれだけ低いのかを、知ることができます。
宇宙は誕生から約1億4000万世紀経っています。そして、今から6000万世紀経つと、太陽は赤色巨星になって地球を飲み込んでしまう。
そのトータル約2億世紀の中で、今はたった1つの世紀だけにスポットライトが当たっていて、その小さなスポットに、たまたまの偶然で自分が生きているのです。
それは、例えば地球から脱出した人間が長い眠りにつき、「色彩に満ち生命にあふれかえっている素晴らしい惑星で目を覚ます」ほど奇跡的で、とてつもなくラッキーなことだと言っています。
第2章 デザインされた物と「デザイノイド」
ドーキンス博士は、ダーウィンの思想的後継者と呼ばれていますが、進化論を否定するグループへの反論が明確に示されていてスッキリします。
「創造説」論者がいう動物や植物はデザインされたかのように複雑すぎて、「単なる偶然から生まれるはずがない」という考え方を自然選択のコンピューターモデルを使って論破します。
どの個体が生き残って繁殖していくのかを自然が選択すると、デザインされたかのような進化が起こるのです。
この選択を自然が行わず、人の手で行うとブルドックのような犬が生まれてしまいます。ブルドックは頭が大きくなりすぎて自然分娩では子どもを産むことができず、帝王切開でなければならないそうです。
人間に頼らないと存続できないわけですから、すぐに絶滅します。このような個体は自然選択では繁殖しえません。
第3章 「不可能な山」に登る
空を飛ぶための翼が突然生まれることはありません。一見不可能に見える進化を可能にするのは、1つの小さな幸運のしたたりが起こってから、また次のしたたりが起こるのを待つ必要があります。
これには、人間の想像を超えた長大な時間軸で行われます。そのため、次のしたたりが起きるまでは世代から世代へと情報が次世代へ確実に伝わっていく必要があります。
それを可能にするのがDNAです。
第4章 紫外線の庭
ドーキンス博士は、生物はDNA言語で書かれた自己複製プログラムを広めるために存在すると語っています。
生物とは、まさにDNAがひたすら同じDNAのコピーを作るために組み立てられた機械です。
第5章 「目的」の創造
人間の脳は急速に大きくなったことで、「目的」を持つことができるようになりました。それまでの進化には「目的を持つ」とかいうコンセプトはありません。
「目的」が人間の脳内に誕生したことで、それが自促型スパイラルを起こしました。
人間の集団が同じ目的のために働くとき、月面着陸やヒトデノム情報の解読のような素晴らしいことが短期的に達成できるようになりました。
■さいごに
この本は1991年に行われたドーキンス博士の全5回の子ども達向けのクリスマスレクチャーを編集して収めたものです。
ですが、内容は大人が十分楽しめますし、20年以上も前の講義にもかかわらず、全く古臭さは感じられません。
難しい内容を優しい言葉で表現し、さらに実証実験を多々交えることで、進化について簡潔にまとめられています。
生命科学に興味がある方は、知的好奇心が満たされますので、入門書としてうってつけの本だと思います。