森博嗣氏は好きな作家さんの一人です。特に第1回メフィスト賞を受賞したデビュー作『すべてがFになる』から始まる『S&Mシリーズ』がお気に入り。
このシリーズは2014年に武井咲さんと綾野剛さんがW主演でドラマ化されたので、小説を読んでなくても知っている人は多いかもしれません。その時の主題歌は今ベッキーとの関係で話題になっているゲスの極み乙女の「デジタルモグラ」でしたね。
個人的なドラマの評価は・・・ やはり2話で一冊分の内容を描くという構成には無理を感じました。ただ本書でも触れられていますが、原作者としてはドラマの出来については満足しているそうです。まあこのドラマの宣伝効果で19年前の作品にもかかわらず、2014年は14万部以上売れているので、文句はないのでしょう。
著者の森博嗣氏について
もともと国立大学工学部の助教授です。理系の研究者らしく国語が全教科の中で最も嫌いで不得意、他人の小説をほとんど読まないという特異な小説家です。
38歳の時に小説家デビューしてからも10年間は大学に勤務していて、本業に影響がでないように小説は夜に書いていたそうです。小説を書き始めた理由は金儲けのためと公言しています。実に理系的な態度ですが、森氏が言うと不快に感じません。
作家の収支が赤裸々に書かれている
著者はこれまで総発行部数1400万部、総収入15億円という人気作家ですが(2008年末に仕事をセーブする意味で引退したことになっている)、その一人の作家のこれまでの経済活動データ、その客観的事実が余すことなく書かれています。
収入に関する小見出しをいくつか上げると
・原稿用紙一枚でいくら?
・単行本と文庫の印税率
・自著以外の原稿料や印税
・入試問題に使われた場合
・「解説」を引き受けたらいくら?
・「推薦文」を書くといくら?
・電子書籍の印税率について
・翻訳されたらいくらもらえる?
・漫画家されたらいくらもらえる?
・ドラマ化されたらどのくらい儲かる?
・講演をするといくらか?
・取材を受けたらいくら?
・インタビューを受けたらいくら?
・ラジオやTVに出たらいくら?
ぜひ知りたいと知的好奇心をくすぐられる内容ばかりじゃないですか?これでも3分の1程度しか上げていません。
最近は芥川賞を受賞した又吉さんの『火花』が240万部の大ヒットを記録したことや、昨日はスタップ細胞で騒がれた小保方晴子氏が手記『あの日』が出版されたと報道されていますが、その印税がどのくらいかというのも、この本を読めば、だいたい予測できるようになります。
また、収入関係よりは少ないですが、収支の関することも詳しく書かれてあり、著者の帳簿を覗いているような気分になれます。
著者はまえがきで次のように書いています。
一人の人間が、パソコンに向かって文字を打つ。文章を書く。それだけの活動によって作品が生み出される。グループで協力し合うような仕事が多いなか、小説家だけは、ただ一人で作品を生み出す。その仕事に寄って、どれくらいの金額を稼ぐことができるのか、ということが、この本の内容である。
小説家になりたいと思っている方がいたら、読んでおいた方がいいでしょうね。そうじゃない方にもオススメです。