【あらすじ】
1945年、太平洋戦争終結。日本には原子爆弾が6発投下され、都市部は壊滅。人口は半減。日本全土を支配下に置いたアメリカは天皇制を廃し、共和制を敷いた。
そんな中、GHQはすでにアメリカで実用化されていたヒト不老化技術(human-ageless-virus inoculation:HAVI)を日本に導入することを決定する――。そのHAVIの導入時に一つの法律が制定された。生存制限法。通称「百年法」。「HAVIを受ける者は、処置後百年を経て、生存権を始めあらゆる権利を放棄することに同意せねばならない」つまり、百年後には死ななければならない。そんな日本で、その最初の百年が迫っていた……!? HAVIをつかさどる官僚・遊佐章仁、国益を追求する政治家・永尾聖水、母がまもなく百年法による死を迎える大学生「僕」、HAVIの世界に反旗をかかげる「阿那谷童仁」……様々に思惑が渦巻く“世界”はどこへ向かうのか!?
来るべき日本の姿を描く、衝撃のエンターテインメント
「不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て生存権をはじめとする基本的人権はこれを全て放棄しなければならない」
HAVIというヒト不老化ウイルス接種の処置により、不老不死ならぬ不老が実現した未来の話です。
全ての国民は20歳になればHAVIを受ける権利を得ることができ、処置を受ければ老化は止まる。つまり見た目が20歳のまま生きていけるわけです。
ただし、病気や事故で死ぬことはあるわけで、不死ではないというところがリアリティを感じさせます。
不老になると、若いままなので基本的に大半の人が死にません。人口は増え続け労働環境が悪化します。親と子の見た目は同じになり家族制度は崩壊します。
真ん中に「不老」と書いてマインドマップを作るように、不老化した社会がもたらす弊害が次から次にあらわれます。これは思考実験のようでもあり、著者は書いていて楽しかっただろうなと感じます。
結局、人間が不老化すると国力の低下、衰退をもたらすということで、国民投票をして一度は凍結されたり、あれやこれやあって「不老化処置を受けて100年経ったら安楽死」という百年法が施行が決定。
そんな基本設定の中で、政治家、官僚、死を目前にする者、死から逃げ出す拒否者、HAVIを受けない者と様々な立場の人間が暴れ回り、壮大なストーリーになっています。そして最後にはHAVIには実は副作用が・・・ これ以上はネタバレするのでやめておきます。
上下巻合わせて結構なボリュームがありますが、読み始めたら止まらなくなるタイプの本です。面白い。読んだ方の多くが映画化を希望するんじゃないでしょうか。オススメです。